認知症の治療
アルツハイマー型認知症の原因は、まだ詳細には解明されていません。つまり、疾患の根本的な治療が行えないのが現状です。残念ながら、病気そのものを完治する治療法はまだありません。
現在行われている薬物療法と非薬物療法についてお話します。
まず、記憶障害の薬物療法です。現在、病院で処方されている薬は、脳での神経の伝わりをよくするお薬です。もの忘れがはげしくなる、同じ事を繰り返す、判断ができにくくなる、などの認知症の症状の進行を遅らせるといわれています。このことにより、介護者の皆さんの負担を軽くすることが期待できます。
そして、妄想、不眠、興奮、落ち着かないなどの精神症状に対しては、精神薬が使われます。現時点で、厚生労働省が認可した認知症の精神症状に対する処方可能な薬はありません。現実に必要とする患者さんには、副作用の少ない精神薬を少量飲んでいただいていますが、ご本人やご家族の理解をいただいてから処方することにしています。
非薬物療法としては、精神的ケアを中心に、集団療法・作業療法、レクリエーション療法として音楽療法・演劇療法などが有効とされています。
脳血管性認知症の場合は、血管障害に対する進行予防の薬物療法(血流をよくする薬)などがあります。
また、様々な原因による認知症に対しては、原疾患の治療が優先されます。
認知症のケア
「診断する、治療する」は、主に病院と家庭で行いますが、認知症の「ケア」は患者さんの生活の場である家庭が中心です。進行しないように見守る、出来なくなったことを援助するが基本です。まったくすべてがわからなくなっているわけではありません。ちょっとした手助けがあれば、混乱なく生活が出来る方がたくさんいらっしゃいます。介護に余裕が持てるように、様々な工夫は必要です。
ケアの基本は・・・
自尊心を傷つけない
視野に入って話す
ゆったり、楽しく、感情に働きかける
簡潔に伝える、わかる言葉を使う
話を合わせる
昔話を聞く、そして現実も強化する
説得しない、否定しない、怒らない
安心できる場を提供する
ひとりにしない
忘れることを利用することも時には必要
そして介護は複数で!
家庭は慣れ親しんだ場・人です。認知症の方には最も安心出来る場所です。その家庭で、「してあげる」ケアから「一緒に過ごす」ケアを目指してください。
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